2020年11月12日木曜日

道具が危ないんじゃないよ2

ある方からコレはイイんじゃないか?って相談を受けて、ちょっと調べてみたんだけど、人気あるのかね?
プーリーに爪付きのクランプが合体している奴。

えっ、これっ
プーリーにブレーキプルージックが
付いてるだけじゃん。
倍力装置として使っても、
ブレーキプルージックの換わりに
ツメのクランプが付いてるだけじゃん。
そんなんで27,000円って、どういうこと?
手持ちのプーリーと、
アカプル1本1,000円くらいじゃん。

プルージック巻くのが面倒な人向け?
プルージック巻けない人向け?
すげぇ高い所にセットして
このヒモ引っ張れば解放できるかなぁ?
レスキューでは使えそうだな? でも私は正直言って使い所は無いな。
無駄だな。って思ってたんで
ノーマークだった。

道具は、使用条件に則って使っていれば何の問題も無い。
しかし使う人の条件が適切で無ければ凶器にも成る。
マニュアルには、当たり前に「こう使っちゃダメ〜」って書いてある。

*ある有名ショップでは、他のプーリーと組み合わせて倍力システムの構築ができます。カム式のロープグラブ(本当は偏心カムで爪ね!)が付いているので荷物の逆走を防ぎ大変便利です。※まあそれはそうだ。でもリギングじゃ無くて個人用PPEね。

*あるショップでは、(カテゴリ自体がリギングハードウエアとして)一方向ロックベアリングは昇降に最適です。ホイールは一方向にロックされ、下降/解放時に最大の摩擦を生み出します。反対方向では、ホイールは自由に動き、持ち上げ/運搬/緊張のための摩擦を最小限に抑えます。
↑英語をそのまま訳したのか?もう何を言いたいのか判んない。
ロックベアリング?昇降?下降?解放?最大の摩擦?緊張のための摩擦?
※昇降とか下降って言ってるのに、リギングハードウエアとして売っている。

そうなのかぁ?って本家ISCのウェブページでマニュアルを見た。
詳しくは読んでないが、いきなり目に入ったのが、
This user instruction does not cover ISC heavy duty rigging pulleys
ISCヘビーデューティリギングプーリーには適用されません。
リギングプーリーとしては使えないじゃないか!
個人用フォールアレスト、ワークポジショニング、救助システムの一部として
「荷の運搬」に使用することを目的としている。
伐った対象の運搬じゃなく、リギングじゃなく、あくまで個人用、人用だ。

個人用のPPEじゃないか!そして荷の運搬じゃないか!
リギングハードウエアとして売ったらダメじゃないの?

それにツメ付きって、、、倍力装置で戻り止めで使う所にツメって、、、
これ仮に倍力で引いてる途中でいきなり荷重が乗ったら、ロープ喰い破らないのか?

まあ一般的にツメ付き道具は、衝撃荷重がかからない状態で最大2人分位の許容だろ。
衝撃荷重がかかったらダメだろ。
そしてPPEだから必ずバックアップ機器と併用しなきゃダメだろ。
更に一番ヤバいのが、4kN以上の力がかかったら器具やロープにダメージがある。
倍力装置として引くのはイイけど、荷重がかかる前に取り外す必要がある。
だからもしもの場合のスリップロードがあるプルージックの方が有効だよ。
もしもの場合に、ロープの外皮を破っちゃうより滑る方が好きだな。

規格準拠は、
EN 12278(登山プーリーの個人用PPE要件と試験)
EN 567(登山クランプの個人用PPE要件と試験)
NFPA 1983、これはNFPAのプーリーなのかクランプの設計要件なのか不明。

WLL=800kg
MBS=40kN

まあ特殊形状のツメなのか?どうか判らないけど、運用荷重が800kgって、これはプーリーとしての要件だろうな。プーリーとしては8kNまでの力には耐えられるって事でしょ。そしてMBSも安全率5:1見て、プーリーとしては40kNまではぶっ壊れないって事でしょ。機械はぶっ壊れないけど、システムはぶっ壊れるかもしれないね。

クランプについては、どうなの?
その使用荷重でロープを喰い破ることは無いの?
機器はぶっ壊れなくても、引っ張る対象のロープ切っちゃダメでしょ。
複合コンポーネントの場合は、それぞれについてWLLとMBSを表示するべきだろうな。
ソコは自分で考えるってことだろうな。
じゃあまあ良いと思うけど、私は使わないな。

メーカーによって爪の形状は違うし、材質も違うから一概には言えないが、私は爪付き道具は4kN以上の力が加わるとロープにダメージを与えるって指針を信じてる。
EN567が、4kNの力を掛けてもロープに損傷の兆候が見られないって試験でパスするんだから、4kN以上の力を掛けたらどうなっても知らないぜ!ってことは4kN以上の力はロープに損傷の恐れがあるって事だろ。だから4kNってのが一応の指針になってる。

要件もプーリーについてだけだろうから、好意的に見てISCのアセンダーも見てみた。
同じメーカーのアセンダーはEN567だった。
4kNの力を掛けてもロープに損傷の兆候が見られない規格だった。
このツメを使ってるとは限らないが、同じじゃ無いの?

恐ろしや〜

いくら規格に準拠していても、複合コンポーネントの場合は鵜呑みに出来ないゼ。

それがだよ。
個人用PPEなのにリギングハードウエアとして売ってる店ってどうなんだ?
ちゃんとマニュアル読んで使用条件を提示して販売するなら良いけど、
リギングプーリーとして使えない個人保護具を、リギングハードウエアとして売ってるヤツらは信用できない。
日本で唯一何処かに認められた団体だろうが有名な販売店だろうが、外国製品を販売するなら使用条件くらいまともに読んで理解して表示しようよ。
あたかもリギングに使えるって売るのは止めて欲しいな。

なんかISCもどうかと思うし、
ソレを売ってる日本で販売店もどうかと思うし、
なあんにも知らず、見た目で便利そうだってポチるやつらもどうかしてるぜ。

* * * * *

スピードラインは、ハゥルデバイス(レスキューセンダーなどの爪じゃない道具もしくはプルージックで)とプーリー2個とブレーキプルージックで、3:1くらいのZで倍力を組んで、直ちに解放できるコンビネーションでやるべきた。そしてハンドホールドで引くくらいのテンションで良い。っていうか手で引けない程ギリギリ引っ張っちゃぁいけない。 更に言えば直ちに解放できないデバイスでは危険が増大する。

仮に倍力装置を使ったとしても、プレテンションくらいで、ロープに荷重が載る前に解放する。後の操作はベクタープルで充分でしょ。
対象ログが伐れそうになって外れそうになる前に、倍力装置は解放するべきた。
バーンと伐って、ドカンとロープに載っかって、サァーって流すことじゃないからね。
伐れて落ちる瞬間にロープを緩ませることで、落下エネルギーを相殺することだからね。
だから集材ポイントは、ロープのほぼ真ん中になるからね。

仮に例えばそんなヤツらは居ないと思いたいが、
スピードラインで、ロープを張ってるときに、このプログレスを使ってパッツンパツンに力一杯引っ張ってたとして、予定より早く外れて倍力を解放する時間が無かったとする。 そのまま張ったロープに荷重が載っちゃったとする。
そして20kg程度の対象が1m落ちたとする。そうすると簡単に200kgを超える、ってことは、機器はぶっ壊れないけど、ロープを喰い破るかダメージが残る可能性がある。

それから倍力でも、ハゥル側にレスキューセンダーとかプルージック使っていれば良いけど、ハンドルアセンダーを使ってる人いるでしょ。例えば3倍力でそこには引く力の3倍の力がかかっているからね。それも複数でエンヤコラ引きしたら瞬間的にはどれだけの力がかかっているか判んないよ。そこでロープを喰い破る可能性が高いぜ。
そして引き手も手で引っ張ると痛いから、ハンドアセンダーとか使って引っ張る人いるでしょ。それもどうかと思うぜ。
テンションラインは、ハンドホールドで手持ちで(手に巻いたらダメよ)引くのが限度と考えた方が良いよ。ロープアクセスでは1人で3:1で引くのが限度って言ってるよ。
手で引けないくらいテンションが掛かけたら、ダメだからね。
そして引くってよりは、手で持って後に下がることだからね。
何人もで構えて、セーノーデ、エンヤコラ!って引いたら瞬間に掛かる衝撃荷重はトンデモナイからね。掴んで後に下がるんだよ。そうしたら初速はゆっくりになるから衝撃荷重にならないし、静荷重強度で充分。そしてピボットで歩く感じだよ。

あまり知られてないかもしれないけど、それがワーカーの条件だよ。
適切な機器コンポーネントの選択だよ。
特殊伐採じゃないスマートなツリーワークだよ。

ツメ付き道具は、使用制限や限界やその試験方法を知ってないとケガするぜ。
安易に便利ってのは、きっとヤバいぜ。
それを紹介しないヤツはもっとヤバいぜ。

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