2010年11月15日月曜日

美登位でワークショップ

木に登ることが目的ではなく
自らのフィールドワークや調査研究のため
木に登って「作業」する人のための
研究会というかワークショップを土日で行った。
目指すはしがみついてるセミやぶら下がる幼虫じゃなく
枝を自由に動き回ったり隣の木に乗り移るエゾリス。
より安全で確実な樹冠での移動メソッドをデモ・体験していただいた。
強風雨まじりの生憎に天候だったが、
目的が明確なだけにみんな熱く真剣にでも楽しく木に向き合った。


単に木に登る方法だけでなく、
樹冠での作業性や安全性を
考慮して自由に動くためには
なるべく楽なアイデアが必要だ。
それに重要なのは
早く確実に行動できないと
体力ばかり使ってしまい作業性も
能率も落ちてしまう。

気合いと根性で行けるところには限界がある。

幹近くだけでなく
梢の先まで移動したり、
樹洞を観察したり、
巣箱を架けたりするためには
登る方法だけでは
使い物にならないことが多い。
両手がフリーになり、しかも
安定した体勢を取る必要がある。

使い方ひとつで魔法のように、行けないところが行けるところになる。

そんなに体力が無くても
ある程度の安全対策と
メソッドを理解できると、
梢の先まで行けるようになる。
幹に張り付いているだけでは
役に立たないことが多い。
作業ができずに疲れると
登っている意味がない。

登りたいだけなら別だが、下で作業できて段取りできるなら
下でヤル方が安全だし効率も良い。
またいろんな道具をたくさん持っていくのもどうかと思う。
調査地は落ち葉の公園や車が横付けできる場所ではなく、基本藪こぎやラッセル。
たとえばビッグショットじゃなくスローラインの腕を磨くこと、
一度投げたら下のラインワークで確実にアンカーを取る技術を身につけること。

目的が梢の先や生物の営巣樹木の場合
レクリエーションベースで考えるととんでもないことかもしれない。
その部分だけ切り取って金儲けしてるなんて思われている節もあるが
レクリエーションだって元々樹上でどう動くかを基本に取捨選択して
メリットが大きい部分を取り入れたモノ。
逆に考えると、アーボリアルな世界を知ってるからこそ取捨選択できるのだ。

アイデア次第で「できない」は無くなる。
できないのは「知らない」ことが多いこともあるが、
それは頭が硬く、視野や了見の狭さが災いしている気がする。

知るためにインターネット等で情報収集することは簡単だが
実際間違った方法や認識違いしてしまうようなものも数多くある。
また、職人技が多く、師匠がやる技術を全て理解しても、
そのバックグランドにある基礎までは理解でき無いことが多い。
それはその師匠個人が経験して積み上げた知識が多いからだと思う。
弟子入りしてもそこを理解するために長いこと時間がかかり、
だからこそ基礎をしっかりたたき込まれるのだと思う。
それでもやっぱり個性の領域なので、
その師匠にとっては「正解」でも、自分には正解でない場合も多く
それを正解と思って行動していると辛い目や痛い目に合うと思う。

今回最大のポイントのランヤード。
長さ・太さ・材質・確保具の形状・末端の取り方・架ける方向やコストまで
こればっかりは人それぞれ自分に合ったものがある。
使いドコによって複数持つとなるとエライ数になる。
カタログに出ているものも一般的なもので自分のモノにならない。
誰かに勧められたもので「こういうものだ」と思っていたら
絶対に自分のモノにはならない。
いろいろ実際使ってみて、検証してみて、可能性を理解してもらうために
相当数用意しなければならないが、
そうなるとこういう機会じゃないと無理なんじゃないかな?
また、興味を持った人には後日自宅でスプライスも行うことになった。

世界のアーボリストが培った
元々古来の技術から発展して、
様々な安全性を求めた形として
蓄積されたノウハウが
より汎用性が高いロープを
使った木登り技術だと思う。
そしてその基本を理解すると
自分のアイデアも活かす領域も
広がり視野も広がる思う。


目的の梢に到達するアプローチは
10人いたら10通りのやり方があるし、新しい発見もあった。
リムウォークはもの凄くクリエイティブだ。
ベーシックな部分を共有することで、
縦割り一子相伝のような技術ではなく、
お互いがアイデアを出し合いリスペクトし合える技術交流というか
みんなでいろいろやってみようゼ!という会は実に有意義だった。

机上や脳内だけでなく身体を動かすことで
本や写真や動画では伝わらない立体的な視点を経験できる。
可能性がグンっと広がり、
みんな自分の研究に対してのメリットを見いだしていただけた。
逆にこれきっかけでレクリエーションに興味を示してくれる方や
林業や造園としての必要性を感じてくれた方もいた。
決定的な動きの差がメリットと危機感を煽ることになった。

アイデアは横にある。
大切なことはガムバって前を見ているときには見つからずに
じつはすぐ手の届く横にあることが多い。

そして文字通り視野が広がることで、
調査の方法やデータの取り方にも幅が広がり
新しいアイデアが生まれ、
もっとよい研究の可能性が広がってくれるとありがたい。


それから、
実際の調査の時にも
呼んでくださいね。
生き物たちの話しも
もっと伺いたかったです。

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