前から気になってた所だが、先日SNSでアルパインバタフライノット(ABK)とディレクショナルフギュアエイト(DF8)akaインラインエイトのどっちが有効?みたいなディスカッションがあって、自分の中でもちょっとモヤモヤすることだったんで、何らかの方向性が出れば嬉しいなと思って興味深く見ていた。
結論から言ってこの二つを比べる物ではない
という私の中で一定の方針が出た。
登ってる途中でロープのミッドラインに
支点やバックアップを作るために
持ってこいの優れた結びだ。
ABKはもう古くからアルパインクライムの
世界で広く流通しているノットで、
とても好きなノットだ。(左:黄)
DF8は、素早く結べて機能しやすいが、
引かれる方向が限定的で、
簡単な故に間違いやすい結び。(右:青)
汎用性で言えばABKに軍配が上がるが
ドレッシングをテーマに機能を見ると
DF8の方がはるかにイイと思う。
ABKは、引く方向が限定されない(*1)んで、タイイングメソッド的には1つの方法でよい。またTDS後に、バイトの長さを自由に調節できるのがとても優れている。
その使用目的としては、傷ついたロープ中間を回避するために、ミッドラインアンカーのストッパーとして、可動するロープでは引く方向が変わる可能性があり、その方向に依存しない中間支点として、リングセーバーなどのストッパーとして、ロープ中間のノットブロッキングとして、2点で組むロードシェアリングアンカーで、バイトの長さが調節しやすく、的確な位置や荷重方向を決めやすい、登っている人がダイナミックロープのカウズテールを持っていれば、何処でも一時的バックアップを作成できる、一時的な倍力装置の一部として、リディレクトなどで身体が振られる場合、携行している重い道具を一時的にぶら下げ身体を安定させるため等々、使い方や目的によって、ちょっと思い出すだけでももう様々な用途で使える。
しかし私は、自分の荷重を載せる(荷重方向が変わらない)ときや、ロープに新たに重量が加わる場合には、DF8を使うことが多い。
ロープアクセスでは、ヒューマンエラーを出来る限り少なくしたいから、出来るだけノットを使わず、デバイスを効果的に使う。
だから覚えるべきノットも数が限定され、数種類のノットだけで全ての作業が遂行できるようにシステムを組む。
確かに数種類のノットを完璧に覚えれば、ヒューマンエラーは格段に減少する。そういう人的要因を出来るだけ少なくすることで、セーフティに繫げる考えもあると思う。
ABKだって、向きや左右や前後を考える必要があるが、条件が最大2人荷重のため、汎用性が高いABKを推奨するのも頷ける。
ツリーワーカーだって、そんなに数多くないけど、そのノットのTDSに重点を置いてる人はあまり見かけない。そのノットひとつが大きくセーフティに関わるという事実を蔑ろにしている人が多い。
それも2人荷重だけじゃなく、300kgを超える可能性があるリギングでも、いい加減なタイイングの人が多く居る。
ランブーの向きとか、引かれる方向とか、左右とか考えると、ベストプラクティスは必ずあるけど、タイイングメソッドが1つしか知らないヤツが多い。
ノットはその方法が間違ってなきゃイイと思ってる人が多いが、私はワークショップで、結びを機能させるためには、向きや、力の方向を考えて、いくつかのメソッドを覚えていた方がイイよって伝えてるけど、そこを蔑ろにする人が多いね。
始めに覚えるのは1つでイイけど、その後の自分お仕事で不都合にならないのかね?厳しい樹冠や体勢が取りにくい状態で、地上と同じTDSを行えるのかね?
メソッドでロープに与えるダメージは大きく変わるよ。
結びがダサイことを理由に「この結びはよく無い」とか言う奴は最悪だね。
良くないのは自分の頭の中身だからね。
話が逸れたが、ABKは、どうも一定方向に引かれて、クチャッてドレッシングが崩れる姿を見たら、ちょっと気持ち悪い。まあその時は引く方向を考えてタイイングを変えれば良いのだが、多くはタイイングメソッドを1種類しか覚えていないから、ドレスが崩れるのを見かけることが多い。
リングセーバーのストッパーとして使う場合などは、実際のロープ径に依存する。またリングの径もまちまちなんで、自分の使っているロープとリングなら自分で検証してるからイイが、借り物やエマージェンシーで簡単に使うと、すっぽ抜けたり、コンフリクトして外れなくなる場合もある。
しっかり結んだとしても、架かる荷重やドレスの状態で結びがリングを抜けるのは恐い。
緊急で倍力を作る場合にロスが多いためあまり効果的じゃない気がする。
登ってるスタティックロープのスタンディングで作ってバックアップにする場合を見かけるが、それは落下エネルギーを引き受けてはくれないので、バックアップにならない。
等々ABKは有効だけど、その汎用性の高さが全てを賄える訳ではないと思っている。
自分のバックアップで使う場合など、自分の荷重方向が明確なんで、それはもうDF8の方がはるかに良い。
倍力で引かれる方向が一定で、しかもラインに沿ってる場合などは、もうDF8が良いに決まってる。
でも、DF8は引かれる方向を考えて、タイイングメソッドを最低2種覚える必要がある。逆向きのDF8は最悪。そしてただのスリップノットになったり、オーバーハンドヌースになったり、ノットを間違えて機能しない場合が多い。
一長一短なんだけど、要はあるノットを比較するのはナンセンスだ。その機能や目的によって結びを選べばよいってことでしょう。
目的が違うタスクを比較しても意味がないよね。
そんな話より、私は出来るだけバイトを小さくしたい。そっちも方が重要なテーマだ。
こういう話が出てくるノット変態の議論は面白いけどね。
似て非なる物だけど、どちらか選ぶ物じゃなく、目的に合わせて使い分けるのが良いよ。
江口のり子と安藤サクラは比較できないよ。
(*1) 厳密にはタイイングの方法で引く方向が決まる。しかしその機能的には荷重方向に依存され難いと言うだけ。
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