2020年11月30日月曜日

ロープワーク?

日本では「ロープワーク」って言葉が一般的だ。

アリゾナで山岳レスキューの講習を受けたとき「ロープワークって言ってるのは何だ?」と聞かれた。日本では広く使われている「結索技術」とでもいうのか「結び方」のことのようで、どうやらロープワークというのがその意味通り通用するのは日本だけのようだ。


Rope Workっていうと、
そのロープの働きっていうか、
出来きた結びが使われてる状態のことで、
例えば船の帆を揚げる行為とか、
装飾としての結びや、
漁網を編むことを呼ぶ。
手芸の手編みのセーターとかも
ロープワークって呼ぶ。

いわゆるご祝儀袋の水引きに近いもの。

ロープで行う作業やロープを使って
何かを引っ張る行為は
ノットクラフトっていう。

世界で通用する言い方としては「ノットクラフト(結びを作る)」ってのが近いと思うが、これは「タイ(tie)・ドレス(dress)・セット(set)」の3部構成になって完成された事象をノットクラフトって言っている。
日本でいう結索技術って考えると「タイ(tie)」のことだけで、その結ぶ方法っていうか、縛り方だけが強調され、ドレスもセットも関係なくなっている。

だからロープワークっていう言い方が妙で「お前の結びは機能してないだろ?だからワークじゃない」って言われる。

だからロープワークって言ってる人の結びは、一方向からのみの結び方で、見る方向や厳しい姿勢で結ばれた結索は機能していないことが多い。
昔の登山好きな爺とかが、自分の胴にリング荷重のブーリンを片手で結べる事を自慢する人がいたが、それを両手使って目の前で作って見てっていうと、出来なかったりする。
奴らはそのもやい結びを方法でしか覚えていない。「自分の胴なら出来るんだけどなぁ」とか言うけど、一つのやり方でしか結べないと、結び方の手順を1から10まで正確に出来なければ結べないっていうのは、もはやロープワークじゃないよね。もちろんノットクラフトでもない。

特に我々のツリーワークなんてのは、風で揺れる枝の上で重心がグラグラしながら、見る方向も結ぶ側も引かれる方向も考慮しながら多様な結び方で、タイドレスセットできないと機能しない。いろんなトラブルがあるけど、その発端に成るのはノットが多い。
そのことに理解していれば結びに手を抜く人はいないと思うのだが、みんなテキトーだったりする。そして対象を吊り伐り降ろす場合などは、タイドレスセットできていないと、システム全体の障害になる。

そういう最も基本の結びを「俺はロープワークがヘタなんだよねぁ」とか言ったりする。ヘタなんじゃなく、そこに障害が生まれやすいことも知らないから危機感が無い。
第一に練習してないだけでしょ!
無理な体勢とか目を瞑ってとか厳しい状態を作って練習してないだけでしょ!
登らなくても出来る基本をアマく見てるだけでしょ!
いざ樹上で厳しい状況になったら、テキトーにヤルだけでしょ!
ただの怠け者か、仕事を甘く見てるいい加減なヤツ。

私は始めとっても結びがヘタで、何度やっても他の人のように巧くいかず、でもシツコイから、家でゴロゴロしてる時やハナクソほじってる時間を結ぶ練習に充てて、3ヶ月続けてたら、もう忘れないよ。手が覚えるよ。
呪文のように結びの名をブツブツ言いながら、しつこく練習したら覚えれたよ。
覚えられないのは、ソレをしていない人だよ。
以前に一緒に作業していた人がとても素早くシステマチックにロープを結んでいて「凄いね」って言ったら、「地上で出来る練習は地上でやってますから」ってカッコいい!

よくロープの強度とか結びによる強度低下のことが取りざたされるけど、ドレスされてない結びは、それだけでとんでもなく強度低下する。
ブーリンでは約70~80%の強度低下を起すといわれているが、ドレスされてない汚い重なりの交差している結びでは、実際に50%以下の強度になる。
ドレスできていない結びは、もはやその名称を使うに値しないハナクソ結びだ。

そのことに気づかされて以来、数多のロープワークの教則本とかが納得いかず、机の上に置いたロープが、テケテケって動いて平べったく完成される結びを見ると、虫唾が走る。 実際は手に持って結ぶし、結ぶ方法について理があるノットクラフトを完遂させるには、手で持った形で表記しないと意味がないと思い、自分で描いた画で師匠に確認していた。ロープを結ぶ為には手に持って行う。ってことでメソッドを知るには「手」も入れないと判りにくい。その画が好評で実に判りやすいということになり、ドレッシングをテーマにした「機能するノット」本を作った。

ちゃんんとドレッシングされてない結びを見ると、直にチェックを入れる。
だって結んだロープが機能していないなら、それこそロープワークしてないなら、形だけそれらしく見えるウソってことになるでしょ。そのことが許せない。

ロープワーククライニングなんて言ってる人が居るけど、結索登攀とでもいうか?もう意味が判らない、とてもケッサクなクライミングなんだろう。
何か特別感やスペシャルな風にしたいんだろうけど、ダッセー!
アーボリストクライマーなんて言い方する人も居るけど、意味考えたことあるのかな?

大体アーボリストは伐る人のことじゃないからね。
伐ることが前提の人はフォレスターとかティンバーとかランバーだから、ランバークライマーなら判るけど、アーボリストクライマーって言ったら樹冠研究とか野生動物研究とか樹冠調査の為に登る人だから、登って伐る人じゃ無いから。

そんな人にタイドレスセットって言っても伝わらないんだろうな。残念。

1 件のコメント:

冨井 さんのコメント...

satoc様
初めまして。冨井と申します。 私はビルメンテナンス業にて高所ロープ作業がメインの業務をしております。いつもsatoc様のblogを拝見させて頂いておりまして、ロープ技術やツリーケアへの仕事に対する構え方に尊敬の念を抱いております。
 さて、私が丁度ロープの結び強度低下についていろいろ文献を探っているところで、satoc様の過去の投稿にあたりました。 結びによる強度低下は凡そ30~35パーセント(種類にもよりますが)との事は認識があるのですが、汚い結びをした場合の強度低下は計測した文献等も見つからず不明ではあります。
 弊社でも結びは綺麗に、ドレスが大事と従業員には伝えてあります。 が他社さんや一人親方さんの結びを見た際にドレスされていないものも見受けられます。 
 satoc様が投稿されている中に50パーセント以下の強度になると記載ありましたが、実際に計測された数字として残っていたりしますでしょうか? それとも、現場にて実際に見られたり体験されたりした裏付けからの50パーセント以下になるとの事でしょうか?  
 私自身もドレスが大事であると思っておりまして、その裏付けとなる数字をもしお持ちでしたら、差支え無いようでしたらご享受頂けますと助かります。
長文失礼致しました。  今後ともご安全に。             冨井