2021年7月27日火曜日

トラディショナルバーティカルスライドライニング(改)

今回は少し面白い事をやってみた。

最近レスキューの世界では、ダルルシートベンドリトレースやブーリンやプルージックを信頼しなくなってきている。
効率や新品時の強度や数値化されたデーターばかり気にしてる傾向に感じる。

私はそんな新品で試験場で行なわれた試験データばっかりじゃなく、多様な環境要因や適切なTDSが結果を生むと思っているので、ダルルシートベンドリトレースやブーリンやプルージックを多用する。
レスキュータスクは基本的にその場で1回上手くいけば良いけど、その1回が全てに当てはまると思っていないから「破断強度よりもドレッシング」を大事にしてる。

試験場で得たデータが即ち現場に対応すると思ってないし、唯一の方法はとても危ういと思っている。アセッサークラスになると、その基本が出来上がっているから、臨機応変に対応出来ると思うけど、初心者が経緯や特性を知らずにプライマリプランだけで、タスクはこなせないと思っている。そして初心者にこれが一番他は認めないと伝えちゃうのは、もっと危険だと思う。
確かに良い結びや方法や道具があっても、現場に活かせないなら、クソだ。 そのために「何でコレがイケナイのか?」を説明して、プライマリと同時にセカンダリも伝える。そして選択してもらう。

確かに結びによって強度低下する実験データがあっても、その結びがダメとは言いたくない。しかも結びは強度があっても直ぐ解けないと適切な結びとは言いたくない。
強くてもホドケなければ仕事にならない。

昔アルパインの経験が有る人間が「アーボリストはそんな前時代的な危険な結びを使ってるのか?」と言われた事が有る。確かに山でブーリンで大きな事故が多発した時代があった。ブーリンの危険性を承知して適材適所に使うなら何の問題もないと思う。
そして我々の仕事は、その結びが都合いいのだ。

タンデムプルージックだって、持ってこいのシチュエーションがある。そこにデバイスを使う方がヤバい場合だってある。
シートベンドはブーリン同様とっても有効でちゃんとしたドレッシングや末端の長さを守っていれば、こんなに有効な結びはない。スリップリィやダブルやリトレースなどシリーズで使い分ければ良いし、荷重が載っても解けやすいのが魅力的。

対象木の成りが垂直じゃなく、明らかに鉛直線より傾いてて、傾いた方向に落下させたいが、しかし落下方向は民地と構造物の間で、自由落下ではハネる危険性もあり、絶対に跳ねさせたくない。地面は下草の土手だし、周囲の木に架かる可能性もあり、落下物の横方向外方向に必要以上にベクトルもフォースをかけたくなく、ポータラップでよりシビアなダンスをコントロールするより、シンプルにバーティカルスライドライニングで良いのではないか?
そこで通常のリギングで処理した枝を敢えて落としたままにして、その上に落下させ地面へのピーク力を減衰させ、その上でバーティカルスライドライニングで吊らずに制御落下させる。っていう手法にした。


でも有名な道具屋のカタログに出てるVertical Slide-liningではなく、そこにタンデムプルージックやダブルシートベンドリトレースを使ったバーティカルスライドライニング(改)にした。Vertical Slide-liningのデメリットのボトムにかかるピーク力が衝撃荷重になる部分を、力の相殺が出来るように伐り方と対象の長さを設定して、伸びないスタティックロープを、動くダイナミックシステムにして、リングにかかる衝撃荷重を巧く抜き、しかも過荷重になった場合も、着地後にブリッヅアンカーで開放できるという我ながら気に入った(改)になった。

フンボルトノッチは確実にノッチで跳ね、重力加速度で増すエネルギーをタンデムプルージックが滑り出す事で相殺し、クライマーの幹に当たらず揺れず、良い感じに落下した。

コイツは条件と状態が適切なら、普通のバットヒッチングやトッピングカットのパラメータをコントロールしにくいクライマーを危険に晒すタスクよりも、よっぽどセーフティで、跳ねて飛ぶから伐り方もそれほどシビアに考えなくても良いし、逆に対象セクションをが跳ねて飛ばして、クライマーが道具も傷め難いし、対象が跳ねて何かを傷つける心配もない。

トラディショナルな、リギング以前の往年の方法でも、条件と状態さえ合えば、そして現在の適切な機器の使用や適材の結びで、とっても有効なタスクになる。



今まで適切な状況がなかったから、あまり使う方法では無かったけど、トラディショナルディスマントリングは、条件と状態さえ整えばとても有効な手段だね。
今回は遊歩道だったので、対象セクションをバラ撒いたり残置できないんで、しかも玉伐って運ぶにしても結構な距離とアップダウンが多く、あまり実用的ではない。大きく落としてポータブルウインチで運び出す方がよほど楽だったから、300kgくらいに大きく刻んだ方が都合が良かった。
リギング(吊り)だけでなく、解体運搬を考えた上の戦略選択が、作業を楽にして余裕も生まれる。最終的にどうしたいか?から戦略の選択が決まって、それに合わせたシステムを組んで、セカンダリも用意して、登り始めないと、効率的な仕事にはならないよ。


まずクライマーが俺様で、そして伐って落とせば地上の仕事。みたいにチームで動いてない奴らは、いつまで経っても仕事は早く効率的にならないし、地上と樹上が互いにリスペクトできないから、現場がギクシャクする。そんなのは仕事って言わないね。





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