マンションの駐車場にドングリが落ちてきて困る、この邪魔な樹木を伐ってしまえ!っていう苦情で(ドングリが落ちるのは当たり前で、ドングリが落ちるところに建物を建てて住んでるんだから仕方がないダロ!)と思うが、まあ緑地から越境しているらしく、担当者もそれほど難易度が高くないと言うことだったんで下見に行かなかった。
そして作業当日現場に入ったら、確かにマンションに隣接してる緑地だったけど、土地を削って平場を作ってマンションを建てたようで、木が立っている崖の上まで15mほど高くなっていて、しかも造成仕様に無理があったようで崖の上は斜地でソコには平場が幅4mくらいしかない。越境してなくてもこれは風が吹いたらドングリは飛んでくるな。
それほどシビアな木じゃなかったけど、胸高直径80cmくらいの強者。何せ下まで40mを超えている。ヘタに降ろして駐車場まで跳ねたら厄介だ。
ドングリって言うからよく確認しなかった。
どういう戦略でやろうかと言うことばかり
気を取られて、ミズナラのテイで作業開始。
基本は自由落下でいいけど、
下まで跳ねたらとっても厄介な事故になる。
シンクカットで受けを薄く、状態を見ながら
追いながら梢を下げて地面についたら
離れるくらいのゆっくりダイナミック。
万が一のことやその後の片付けを考えて、
バットをリギングリングでブロッキング。
って思ってたら、、、
追い始めたら、すぐに下がり始め
メキメキ折れて外れた。
ミズナラは硬いし粘るし安定してるから、
経験上戦略の組み立ても難しくなく、
軽く考えていた。ところが簡単に外れる。
コナラだった。
バットをブロッキングしておいてよかった。
植生も生長いい状態で、ただ現場固有の
リスクのためだったが、樹木の特性が違う。
コナラなら追いはきっかけ程度でよく、
自重で外れる。
降りてきた葉っぱを見てゾッとしたわ。
葉柄が長く、葉も冬芽も小さく、
ドングリはとんがってるし、
見るからにコナラだった。どうして
そんなことに気がつかなかったんだろう。
イカンね。この辺りにあまりコナラは無く
ちゃんと確認していなかったからダロウで、
経験則で、ドングリってことで、
自然に接してはいけない。
こんなこと言ってはいけないが、登って葉っぱの近くに行くクライマーも気が付くべきだねぇ。当たり前だと思ってたことは、単に自分の思い込みで、現場の条件や状態で変わってくるし、第一樹種を読み間違ったなんてシャレにもならない。
受けは浅く広く薄く、必ずカフ入れて、バックカットはきっかけ程度。やり方が解れば操作方法だって変わってくる。バックカットは手ノコで十分だから、その分安定した体位や逃げのポジションも取りやすい。グラウンドの操作もフィックスでいい。
硬くしっかりしてるんで単純な2系統でいいが、コナラならアンカーが崩壊する可能性もあるから、アクセスラインとASAPが一番いい。角度がついてもシステムの2系統より操作が簡単だし、セーフティをあまり意識しないで登れる。その分効率が上がり早いし安定するし、樹上ではフリップラインとランヤードでいつものやり方で良い。
上で何かあったら一発ですぐに降りて来れないけど、何も自分でロープだらけになり手間をかけなくても、そして地上まで続く長いロープで作業が複雑になったり、重い作業をしなくていい。レスキュアーが必要なタスクになれば必ず別系統の下降ロープ持ってけるもんね。第一アクセスラインがあるんだから、レスキュアーのすぐに行動できる。
良いアンカーのアクセスとセーフティで、
垂直移動で一気に登ってから、
ランヤードで確保しつつ、アクセスラインに
ASAP付けて、危ういと思われる作業位置に
フリップラインでシステム組んで、
部分的に3系統で危うい作業位置側に移動。
ヤバい側に近づいてら、追加のランヤで
確保しつつ作業すればいいだけだよ。
ヤバいなぁってビクビクしながら、
恐る恐る作業したら、遅くなるし、
視野も狭くなるから、現場固有のリスクに
対応できなくなる可能性も増える。
ちっともイイことないよ。
気合と根性でエイッて男らしい命がけの
作業するくらいなら、
セーフティに手間をかける方がイイよ。
結局早いしね。
よく最初からMRTでエッチラおっちら登ってる人を見るけど、あれは効率悪いんじゃないか?早く楽に登れそう!ってデバイスにこだわったりするのは、肉喰ってる外人がプロモーションのために一気に登ってる動画見て、素早く降りる姿見て、早く楽に登れる!って感じちゃうのは楽天家だね。YouTubeの悪影響でしかない。楽に登るならSRTでしょ。そしてSRTで登っても、長〜いMRTシステム持って登るでしょ。
どうせ使う部分は末端から10m程度。だったらフリップラインでいい。どうしても下まで降りれるロープにこだわるのは仕事が遅い証拠だよ。命がけで仕事する割りに自分のシステムに自信が無いんだね「ロープの短さと仕事の早さは比例する」ってニュージーランドの誰かが言っていたなぁ。
なんのことはないシンプルな現場だと思ってたけど、実際動き出したらそうじゃ無くたって、自分の唯一の成功を当てはめて、無理したり、返って難しくして、危険にビクビクしながら、時間がかかって結果より危険な方に向いてしまうヤツが多いと思う。
現場に合わせて少しだけ改良できる知識を経験で持つと、全体的には意外に早くセーフティにコトが運ぶ事が多い。コナラの特性を承知すればシステムだって変わってくる。
登り方だって、ポジショニングだって、伐り方だって、降ろし方だって、片付け方だって、変わってくるのさ!ただ登れる方法を知ってるだけで作業にはならないのさ。
現場に合わせて戦略を組み替えたり、実際に動いてから予測しにくいパラメータのために、技術でなんとかするんじゃなく、知識で他の考えを提示できないとイイ仕事にはならない。
最初は過剰とも言えるセーフティから始めて、徐々にタスクオブユジュアリーで、早く効率よく手順を省いたり、現場に合わせた修正やタスクそれぞれに合わせた省略するのが、効率を上げる。ただし必ずセーフティを見て行動するってことよ。
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