不肖私が専任講師をしている、アーボリアルトレーニングセミナー(ATS)の基本は、樹上でどうやって作業をするか?そのためにクライミングやポジショニング、リギング、カッティングなどの、さまざまなリスクを知ることで、その回避の選択肢を広げ、より危険が少なく効率的で楽な樹上作業を目指しています。特殊伐採じゃないからね。テーマは危険回避だからね。そりゃ〜知識と技術で効率が上がり、儲かる人も居るけど、簡単に儲かるようになる技術じゃないからね。
しかし、実際に林業や造園の方は、これまでにも作業経験があり、単に登れれば何とかなると思っている人が多い。そしてそういう方は、登るための道具さえ揃えれば「講習なんてうけなくてもなんとでもなる!」と思っている方がほとんど。お店に行って「この道具はどうやって使うんだ」なんて聞いたらダメだよ。どうやって使うか判っているコトをより良くする、自分の出来ることを効率良く安全にするものだからね。魔法の杖じゃないからね。道具持ってニヤニヤしても、安全や効率を担保できないからね。
そんな輩はハシゴや脚立の延長線上にロープがあると思っている。ただそんなに高いハシゴがないからロープで登ればイイと思っている。ロープは命綱だと思っている。
そしていつも使っている「胴縄」って命綱だと思っている。その胴縄を接続してる「安全帯」は、安全だと思っている。シンジラレナイ。
安全帯はただのベルト、胴縄は命綱じゃなくワークレストレインですからねっ!あんなもんに吊られたら、グランドフォールしなくても、脊髄損傷だからね。そしてそんなぶら下がった人を助けられる技術を持っている隊や人やサービスはほとんどありませんからね。
ちゃんとポジショニングしないで、樹上で変な体勢で結ぶのは難しいからね。片手でグラグラ揺れながらノコを引くのはしんどいからね。吊った対象がズドンッと飛んで来て挟まるかもしれないからね。地上で作業しているときみたいに簡単に逃げられないからね。そういったさまざまなリスクを無視して作業できるのは、空◯とか漢とか言ってる一部の命知らずの曲芸師ですからね。
ATSではそういうコトや基本の力学を伝えてるつもりだけど、人の話しなんて聞かずに「この道具はどう使うんだ」とか「これを使えばあんなに軽々登れるんだ』とか、頭おかしいんじゃないの。
結びやスローやポジショニングもまともに出来ないで、自分の体型や登り方のスタイルを考えず「一流のアーボリストが使ってる道具だから間違いない」とか「これでおいらもアーボリストの仲間入り」みたいにニヤニヤしてるのは気持ち悪いぞ。
道具が無くたって自分で出来る[結び]や[スロー]の練習や努力は、出来て当たり前。作業姿勢を決めるのに幾ら時間がかかっても文句は言わないが、結びやカットでモタつくのはただの不真面目・勉強不足・怠慢だからね。
そりゃ〜一足飛びに素晴らしい技術が手に入ることはないが、ちゃんとロジックを理解すれば、私は、樹上作業は誰でもできると思っている。
手を抜かずに真摯に努力し、力学の基本が判れば誰でもできる。時間はかかったとしても、チームでカバーしあいながら、少しづつ一歩一歩基本に忠実に行えばチームのスキルだってドンドン上がっていく。
ギリギリの見積もりをしないで、作業の中で少しずつ新しい技術を試行してみるとか、簡単にこなせるものでも少し難しいシステムを使ってみるとか、可能性とイメージで工夫すれば、2〜3年で他では出来ない良い仕事ができるようになると思うよ。
無茶できる漢がいて、そいつにきわどい作業を任せっきりで、安穏とチームのスキルアップせずにこなすだけなら、その漢がいなくなったら何も仕事できなくなるよ。チームの全員が何をしてるのか?どうしたら良いのか?何をすべきか?ソコに危険はないか?を常に考え、お互いに意見しあえる環境がないと人は育たない。トップが漢なら、それはもうチームじゃなく、曲芸師のアシスタントだからね。トップダウンでシステムの擦り合わせもなく共有できなかったら、グラウンドだって動きようがなく、オロオロするばかり。クライマーは俺はこんなにしんどいことやってるのに、グラウンド何やってんだよ!って思って、現場は殺伐として
お互いの信頼関係も無くなる。
特殊伐採という言葉があるが、キライ。私からすれば命がけのハシゴ仕事の方がよほど特殊だと思う。それとも命知らずの特殊な漢がヤル仕事ってコトかな?自分の仕事をスペシャルなものだと思っているナルシスト?そんな人が多い気がする。
アーボリストは伐採屋じゃないからね。
樹木ってへたしたら自分より長生きしてる。それに手を入れるんだからリスペクトしないと。カッコ良くしてやらないと。特殊な伐採じゃないんだよ。
クレーンや高所作業車でバッツリ断幹したり不定芽や吹いてる所無視して伐っちゃうから、樹形もカッコ悪く、ボォワッと暴芽して、数だけ多い細い胴吹きになって、みっともなく、その後登れなくなったって、どうしようもなくなってからなんとかしてって言われたって、できることが限られる。その後カッコ良くするのに何十年もかかるんだから。
クレーンや高所作業車より時間はかかったとしても、それ以上の仕事ができるんだから。落ち葉を減らしたり、成長を促したり、カッコ良く樹形を保ったり出来るんだから。アーボリストは登って伐ったりするけど、特殊伐採じゃないから。登って伐った方が良い結果に導けるから。アーボリストってアースデザインだから。
そんなバッツリ伐られて暴芽したヤツでも、丁寧に活かす所を残して、要らない枝を間引いて、大きくならず広がらず、透かして剪定して、ゆくゆくはカッコいい樹形に戻すことが出来る、かも知れない。アーボリストってアースデザインだから。
まあそんなこんなで、
以前ATSの講習2まで受けてくれたチームが
可能性とイメージの工夫で
ワンランクアップの作業を目指した現場を
一緒にやらないか?と誘ってくれた。
丁度良い難易度の、リスクも大きくない、
そしていろんな人にアピースしやすい、
絶好の現場「札幌時計台」
数年前に強剪定されて暴れちゃったヤツ
巧く樹形が再生すればカッコいいぜ。
自分でも都市の中心部でやったことない。
ヘタうてないゾって緊張しながらも
イイ感じで作業が進められた。
はじめてまだ日が浅いメンバーは、
カットポイントに近づくと、
直に結んだり伐ったりしようとする。
っんじゃなくて、
ちゃんと安定した作業姿勢を取ろうゼ。
ポジショニングだよポジショニング。
頭の上より胸の前、
腕が伸びきるんじゃなく、肘が曲がる所で
身体伸びきって突っ張ってたら、
風で揺れたらしんどいゼ。
掴んで伐って落とせるものはそのまま、
少し重いのは簡易リギングで、
しっかり重いのはスタティックリギングで、
もっと重いのは2点でMで吊って、
それぞれの対象に合わせた
それなりに盛り沢山のショーって感じ。
まあいいトコ進んで、
皆、可能性と楽しさと難しさを実感。
目がイキイキしている。
そして2日目には、ゆる〜い繋がりの
私が最も信頼している、切り込み隊長を喚び
えいや!って、どうだコノヤロって
すげぇところを見せつけた。
ワークポジショニングランヤードは
身体を安定させるだけじゃないんだゼ!
揺すって動いて確保することも出来るよ。
ヘタなシステムに頼らず、
ランヤ2本で、上にも、細い梢先にも
どこまでも行けるゼってワシワシ動いて、
効率を考えて手順よくサクサク伐って
私が見ても惚れボレするスマートさ。
チームの皆もギャラリーも
「へ〜」しか言えない。
チームも触発されたようで
私も含めて本当に良い刺激になった。
最後にリングセーバー残置ってオマケ付き。
これも含めて良い仕事よい実践。
アーボリストはマイナスをプラスにできる。
ゼロに戻す仕事じゃないんだよ。
ダメな所をとりあえず無くすんじゃなく、
今後良くなるかもしれない所を活かす。
アーボリストの可能性をアピールできた。
みんなありがとう!
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