2008年12月4日木曜日

灯台の着氷実験

朝早く日本海側の小さな漁港に向かった。暑寒岳が朝日に映えてとても綺麗。天候も良く風もなくキリッと冷えた空気が心地よい。途中の山の中でチゴハヤブサを確認。なぜ漁港に向かったかというのは少し話しが長くなる。


北海道の防波堤灯台は、冬の厳しい波高と寒冷や風雪の影響で着氷することで灯台自体が樹氷のように覆われ、灯火が見えなくなったり、倒壊のおそれがあるような状況になります。更にいつも波に洗われる灯台までの防波堤の道のりも、氷の斜面になった中を保守に向かわなければならないそうで大変危険だそうです。
そのため、着氷の影響を緩和するための措置として、実験用灯台を帆布で覆い、風によって起こるフラッタリング効果で、表面に付着した氷や雪を落とすという着氷対策実験を行っています。


昨年は撥水性の帆布で実験灯台を巻いたそうですが、数ヶ月で布が破れてしまい、直そうにも絶え間なく海水と波しぶきがかかる中を、アイスクライミングの装備で雪壁のトラバースよろしく長尺のハシゴを担いで向かうのは無理となり、装備が手軽でメンテが容易な方法が無いかということになり、この研究をしている大学の先生からツリーイングの技術を何とか応用できないかと相談を受けました。
ザックひとつでどうにかなり、容易にメンテできるシステムづくりをいろいろ試行錯誤し、行き着いたのがSRTとTRRの応用でした。
灯台の上部には設置時に使用した吊り下げ用の耐荷重9tのフックが4つあり、そこにビナでアンカーを取りロープを通し、SRTシステムのようにボトムアンカーにします。ボトムはアンカープレートを使ってプルジックで2カ所カウンターバランスになるように確保し、普段はパツンパツンに張っておいて、荷重が乗った場合には確保したプルジックで滑り出すことでロープが切れるのを防ぎ、落ちてきたらボトムアンカーのプルをリセットすることで状態を維持できるので、メンテも楽なはずです。


手配してもらった道具に若干の不備があったので、倍力でノットを固着させたり、システムを組んだり、漁師や釣り人も興味津々の中、なんとかセッティングできたました。しかし冬の時折波しぶきがかかるような防波堤で、しかもこんな海の間近の灯台でツリーイング(この場合ツリーじゃないな)したのはもちろん初めてで、非常にエキサイティングでした。
布の素材は範疇外ですが、今までこんな利用をしたことはないし、道具もそれ用のものではないし、耐久性や耐食性も不明だし自信はありませんが、トライアルとしてでかまわない旨了解を得たので、この冬の動向が楽しみです。
目的は違いますが応用した使い方で、北海道らしい利用方法だと思います。
うまく行ったらいろんな意味で仲間が増えるかなぁ。

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