2020年4月22日水曜日

起こるべくして起こった事故

知り合いが対象と一緒に落ちて挟まって背骨骨折の大けがをした。

話を伺うと、本当に稚拙でお粗末な人的要因だけど、そこにミスが表面化する前の、
器材要因も、環境要因も、第一に組織の要因すら整っていないのだから、
起こるべくして起こった事故だ。そしてコレが最初ではない。

もっともその方は「クライミング」のコースを2日間受講しただけな人で、
でも組織の方針で、リギング・解体まで何でもヤラされていたようだ。
現場に居たグラウンダーは、作業の計画や方法も何〜も知らない作業員で
(もっともクライマーも純粋に登る以外の事は全く何〜も知らない素人だけど)
そんな人が現場で実践的に作業をしているというから恐ろしい。
Climbing(登降)
Positioning(姿勢)
Riggnig(吊り)
Cuttnig(伐り)
dismantling(解体)の違いすら理解していない人に、
全部の作業をやらせる組織の要因が一番悪どい。
これまでにも事故が有ったのに、何の改善もされず、続けていた。信じられない。

でもこの人にクライミングの方法を伝えたのが私なので、
私が伝えなかったら彼も落ちなかったのかなぁと考えると、、
とても悲しい気持ちになる。
オレのセイじゃ無い!って思っても、どっか引っ掛かって心に残る、
なんか寝覚めが悪い。すぐ考えてしまう。
暫くは思考が前に進まなくなり、身体を壊しジッとしていて
たっぷり時間が出来たので、少しはまともに考えられるようになった。

ここのトクバツはクライミングしか出来ね〜ヤツしか居ないし、
クライマーの独断だからチーム組めね〜し、
同じ現場でも他の人が作業の基本も判ってない。
でも仕事取ってくるのは巧いんだよなぁ。
こういう人が知識と技術を持つと最高なんだけど、
知識も技術もチームワークも作業に必要なモノは何にも無い。
対外的な免罪符や安全講習なんてやっても組織要因が一番の悪だから、
レスキュー講習なんかヤルだけ無駄だ。
第一地上作業員はクライミングの知識すら要らないというのだ。誰が救助するってぇの?

幾ら講習の中で
「これはクライミングの方法なので、木を伐って吊って降ろす事は出来ません」と
伝えたって、基本的に登れれば何でもできると思っている人には伝わらない。
そればかりか<講習を受けた>という証拠が免罪符的に作業に導いているコトになってる。
「登って構えてセットして吊って構えて切って逃げて構えて」という行程の
最初のごく一部の手法を知っただけで、プラクティスも繰り返さず、
<登った事が有る>
   ↓
<登れる>
   ↓
<樹上作業が出来る>
コトに変移している。

賢明な人なら、コレだけじゃ作業にならないと理解して、先のコースに進むのだけど、
ここは、そうじゃない。
まあ私としても、登れるだけじゃ何もできないんだから、
人も育てられないし、ヤラされたとしても皆怖くなって辞めるだろうし、、、
ってな具合で放置し、見過ごしていた。自分が悔しい。
こういう組織は登れれば伐れ!という思いっきり短絡なんだなぁ。
また受講を断るスベもなく、勝手に申し込まれて、誰かすら判らず当日現れる受講生に、
ダメですよって言ってもそりゃぁ、オレもダメだな。伝わらね〜な。
まず入口でアンポンタンを抑止出来るシステムが必要だ。
こういう輩には受講を諦めてもらうための手段を講じる必要がある。

最近は私の講習を受けに来てくれる人に対し、自分の根拠は何処に有るかを尋ねて、
自分の根拠を持つように伝えるようにしているし、
スキルシートで自分の位置を確かめて貰ってるけど、
それが、学生時代の登山経験に由来する男前な登山からだったり、
十数年前の日本創成期のクライミングだったり、
初期の知識がアヤフヤだから
段々自分の都合の良いように変えちゃうし、YouTubeだったり、道具も買えるし、
イケイケゴーゴーな人には、何が問題かすら判らないようだ。

私個人としては、いろんな師匠に師事して経験を積み、
実践して失敗して再構築して、リギング作業の指針のような資料を参考にしたり、
自分なりに消化したところで、軽く短い対象で、重力・角度・フォースを体感し、
そう自分の都合の良いようには行かないんだなぁということを理解してきた。
ロープにぶら下がって力でねじ伏せるのは無理だよ。だから頭を使うよ。
そして順にシステムをバージョンアップして、サイズアップして、
怖いから→面倒な勉強して、プラクティスして、危険少なく作業出来るのだけど、
最初の「怖い」が無い人は勉強もプラクティスもない。
道具に頼る。力で何とかしようとする。ド派手なYouTubeを参考にする。

そして作業は当たり前に危険だと思っている。
しかし、すぐにトッピングカットしようとする。
例えばRR668でも「木の作業は肉体的に厳しく危険性が高い」と言われている。
だから「安全なリギング戦略とシステム」とか「適切なリギング手法の選択」とか
「器材の選択」とか有効な手段を用い、可能な限り危険を回避する。
トッピングカットやスピードラインは、
他に方法が無い時にやむなく選択するもっとも高度な技術だからね。
そしてそういうコトを伝えてるのに、
やれスピードラインだ!スパーだ!GRCSだ!ってどれだけアホなんだと思う。

基本的に動荷重やリフト使わなくたって出来るからね。出来る方法を探せるから。
そしてそういう難しい作業は、厳しい見積もりの元で資料を活用し、
面倒くさい公式なんか用いて達成されるから、
喜びも一塩でYouTube紹介しているのだと思う。
見た目で、手法だけマネして、シャー!グイグイ!ドスンバタンは違うと思う。
それを見て「おーこれだ!」ってどんだけお粗末な人よ。
トッピングカットっていわゆるスナッチバットローピングで
「最悪のシナリオ」と呼ばれている。
これ以外の方法が無い場合にしょうがなく選択する方法だ。
その最悪の方法を使いたがるって、どんだけよ。

スタティックリギングは、動かないから動画にしても面白くないから
そういうちゃんとしたセオリーは、あんたたちが見ないだけだから。
リギング作業は、決定的には危険かもしれないが、
出来るだけ危険少なくして力を使わず出来る知識があって、
まさにそれがアーボリカルチャーのツリーケアで、世界中の様々な人が調査実験研究して
指針出してるのに、ソレを面倒臭がったり、自分の努力を惜しんだり、
時間がかかるとか、金がかかるとかを理由に、とてもイージーにやってしまう。
ただの無知ですから。バカの壁ですから。
作業の基本と成功へのプラクティスは、探せば世界中にありますから。
でも日本じゃ寝てても良い「特別教育」を受ける事がマストで、
受けてさえいればマスターらしい、コレを免罪符にしたら、死ぬよ。っつうか出来ね〜よ。
 
そこの組織の親玉は、救急車で運ばれた従業員が入院した病院に駆けつけて
切断されたハーネスを見て
「これミシンで縫ったら使えるな」っと言ったそうで、もう何が何だか。

0 件のコメント:

コメントを投稿