2012年4月26日木曜日

魅力的なモノ

素敵な文章に出会うと、頭の中にイメージが浮かぶ。
色っぽく瑞々しいセンテンスが五感を刺激し、臨場感が広がる。
同時にデザイナーの悪い癖で、作者の心情を想像したり
読み手の感情を予想したりする。
これはあくまで個人の考えなのだが、そういう文章ほど
レイアウトや章の構成や紙質などの装丁に疑問を持ったり、
ああ、ココをもっとコウすると、もっと素敵になるのに。といって
形にしてみたくなる。

魅力的な文章に出会った時ほどクリエイティブ魂に火がつく。

小説や絵本ならイメージを広げる手法の邪魔にならない工夫が大切で、
モチーフは一緒であっても個々の頭の中には違ったイメージが
出来上がる方が面白いのだが、
マニュアルとか取扱説明書とかテキストの場合、
そうじゃない要素が必要になってくる。

いろいろテキストものを作っていると、
「果たしてこの挿絵は必要なのだろうか?」という疑問によくぶつかる。
内容の理解度を高めるために図や挿絵を入れることが多いが、
情報を整理し端的に表現するので、食い足りない部分もある。
理解しようとしない人に限って、その食い足りない部分をすっ飛ばして
図や挿絵だけで判断することが多い。
文字を読むことが嫌いとか面倒とかそういうことではないと思うが、
簡単に考えて自分の都合の良い部分だけを都合よく取り入れようとする。
危険には触れず、安心な部分だけを見て作り上げる安全のようだ。
そこを増長するモノを作ってはいけない。

だから挿絵は「サービスよく理解しにくい」コトを一番に考えて描く。
見た目で動いてもイメージ通りに出来ないような挿絵が良い。
とはいえいちいち緻密な計算をしている訳ではないが、
当然のように整理して組み立てているので意識していることではない。

表現の目的は、作者の考えを伝えることだから
伝える行為が巧妙に洗練されている方が、よりクリエイティブだし、
ターゲットが決まっている場合には興味を持つ流儀を理解して、
同じとはいわないが同程度のイメージが確立できるように工夫する。
あくまで魅力的に読み進められるように。

読んで、感じて、納得しやすい工夫を、
目に見えない、言葉にならない、加工を施すことで、
読み手が目的を自分のものにしやすくなることが仕事だと思う。
せっかくの良い文章が、拙いイラストのせいで
伝えたい内容の邪魔をしたらもったいない。


デザイン装丁・イラストを担当しました。
アーボリカルチャートレーニング
ロープ・クライミング・テクニック

非常に満足度の高い、良い仕事が出来ました。


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